現代の医療では治療不可能な病気にかかった、子どもの患者に対して考慮される終末期医療のこと。成人患者の場合と同様、本人の希望や生命の質(QOL ; quality of life)を重視するケアをさすが、子どもの意思表示や理解能力をどうとらえ、自己決定権や知る権利をどこまで尊重するのか、また病状説明の仕方などにも、成人とは異なる配慮が求められる。2009年6月に開催された日本小児医療政策研究会では、ターミナルケアを必要とする子どもの約6割は、神経細胞の変性で全身の筋肉が萎縮する脊髄性筋萎縮症(SMA)、先天性の染色体異常で重度の発達遅延が起こる18トリソミーといった、難治性の病気であることが示された。10年12月には、財団法人がんの子供を守る会が「この子のためにできること 緩和ケアのガイドライン」を作成し、同会と日本小児血液学会、日本小児がん学会、日本小児がん看護学会との合同ワークショップで公表された。本指針は、医療従事者のほか、家族、教育・保育者も含めた、ターミナル期の子ども患者との向き合い方などを示した画期的な内容になっている。子どもに対するターミナルケアは、成人とは異なる特殊性が注目されはじめ、医療現場での必要性からも関心が高まっている。