妊婦が医療機関において匿名で出産すること。2017年12月16日に、親が養育できないとして子どもを匿名で預けることを受け入れる、こうのとりのゆりかご制度(→「赤ちゃんポスト」)を実施している慈恵病院(熊本市)が、新たに、妊婦が匿名で出産できる内密出産制度を導入する計画を検討していることを明らかにした。現在、同病院が開設している「赤ちゃんポスト」には、07年5月の開設から10年間で130人が預けられたが、そのうちの62人が自宅などで出産され、医師などの立ち会いなどがなく生まれていた。このような危険な状態で妊婦が出産することを避けるため、また、こうのとりのゆりかご制度が「子どもの出自を知る権利」の保証のないままに推移している問題を回避するため、内密出産制度を計画したとしている。14年にドイツで導入された内密出産制度は、妊婦は公認された妊娠相談所に実名を明らかにし、医療機関では仮名で出産できるとしている。それに対し、慈恵病院で検討している内密出産では、妊婦が行政機関に実名で届け出たうえで病院で匿名で出産し、生まれた子どもは特別養子縁組をして、一定年齢になれば出自を知ることができるようにするとしているが、具体的にはこれから検討される。こうした制度が一病院の試みとして行われるのではなく、行政も関わるのであれば、国も含めて子どもの権利が十分に保障された制度として認められるかが注目される。