微生物が産生する、他の微生物の発育を阻止する物質。現在では、抗がん剤のように微生物以外の細胞を対象とするものも含まれる。また、微生物が産生したままではなく、化学的修飾を加えたり(半合成抗生物質)、全合成するものもある。したがって、現在では、抗菌剤や化学療法剤との区別はあいまいになりつつある。化学療法剤は微生物の生命維持や増殖に必須の物質代謝の各段階に作用して活性を発揮する。その代表的な例と薬剤を以下に挙げる。(1)細菌細胞壁の合成を阻害する薬剤(βラクタム系薬剤としてペニシリンが有名)。(2)DNAやRNAの合成を阻害する薬剤(リファンピシンなど)。(3)たんぱくの合成を阻害する薬剤。抗生物質の登場で細菌感染症の多くは治療が可能となり、死亡者の数は激減した。しかし、開発・普及に伴って、薬剤耐性菌の出現、副作用、菌交代症などの新しい問題も生まれた。