健常人の口腔や鼻腔などに高率で見つかる、弱毒性の常在細菌であるグラム陽性の肺炎球菌によって引き起こされる感染症。肺炎球菌は肺のほか、中耳、副鼻腔、髄膜、まれには心臓弁、関節、腹腔などにも感染症を引き起こすが、そのうち最も重症で多いのが肺炎である。症状は突然の強い胸痛や悪寒で始まり、その後に発熱し、せきやたんが出る。ウイルス性の上気道感染を合併していると、さらに症状の増悪が起こる。肺炎球菌感染症は、白血病や悪性腫瘍、エイズのような慢性の病気、またはエイズや高齢化などで免疫力が低下している場合に重症化するので、院内感染対策上も重要である。診断では、たんの顕微鏡観察やたん、膿、血液のサンプルを培養して調べる。予防にはワクチンがある。治療にはほとんどの場合、ペニシリンが使われている。ただしペニシリン耐性菌の増加のため、ニューキノロン系の抗菌薬を使うことも多くなってきている。