高熱と咽頭の水疱(すいほう)を特徴として、小児に発症する夏の流行性感染症。いわゆる夏風邪の代表である。口から侵入したピコルナRNA (ribonucleic acid)ウイルスによって起こる。流行を起こすウイルスの多くは、A群コックサッキーウイルスであり、ほかにエコーウイルスなどがある。感染後2~4 日目に、突然の発熱に続く咽頭粘膜の発赤、口腔内、主として口腔上部に、直径1ミリ程度の小さな水疱といわれる水ぶくれが出現する。これはやがて破れ、浅い潰瘍(かいよう)やびらんを形成し、疼痛を伴う。発熱は2~4 日間程度で解熱し、それにやや遅れて、粘膜のびらんも消失する。発熱時に熱性けいれんを伴うことや、口腔内びらんの疼痛のため、不機嫌、拒食、ほ乳障害、脱水症などを起こすことがあるが、患者のほとんどは予後良好である。まれに髄膜炎や心筋炎に進行することがあるので、要注意。通常の治療は、解熱など対症的なもので十分である。時には脱水症に対する輸液治療が必要なこともある。強度の頭痛を訴える髄膜炎や、呼吸困難や血圧低下を伴う心筋炎の合併例では、緊急の入院治療が必要である。特異的な予防法はないが、感染者との密接な接触を避けること、流行時のうがいや手指の消毒により注意する。