コレラ菌(vibrio cholerae)という細菌の感染による、流行性の激しい下痢症。インド、パキスタン、サハラ以南のアフリカ諸国などのうち、水の衛生環境が未整備の熱帯・亜熱帯地域に発生が多く、2010年には、大地震に見舞われたハイチ共和国での流行が深刻な社会問題となった。日本では現在、ほとんど発生がなくなり、症例報告の大半は、そうしたコレラ流行地からの帰国者がもたらしている。感染した患者は、約1日で嘔吐(おうと)と下痢を訴える。症状が軽く、軟便のこともあるが、劇症型では、下痢便は“米のとぎ汁様(rice water stool)”と形容されるような特徴的な白色ないし灰白色の水様便で、1日に10リットルを超えることもある。下痢は、小腸内でコレラ菌が産生する、コレラ毒素によるものである。治療は、急激な下痢によって失われた水分と電解質の、経口や点滴などによる補充。すなわち、脱水症に対するものが、もっとも重要である。急性期の治療が適切であれば、後遺症はない。