野ネズミが保有するハンタウイルスが人に感染し、肺水腫(肺に水がたまる病気)を伴った急性の呼吸困難を起こす病気。致死率は30%を超える。1993 年、アメリカのロッキー山脈地域で死亡例が連続し、原因不明だったことから、スペイン語で「名無し」を意味するシン・ノンブレウイルス(sin nombre virus)の出現と恐れられた。この病気は、南アメリカでも発生しており、動物から人にうつる新型の人獣感染症とされている。乾燥したネズミのふん便を吸引したことでの感染例もあり、注意が必要である。人から人への感染例はない。同じハンタウイルスの仲間を、中国や韓国の野ネズミも保有していることがあり、アジアでの感染例では発熱とともに腎臓の出血死を起こす。動物が保有する危険病原体の一つとして、注意が必要である。抗ウイルス剤などの治療薬はなく、治療法は対症療法のみである。