狂犬病ウイルスに感染したイヌの咬傷から伝染し、ウイルスが脳内に侵入することで死に至らしめる病気。狂犬病ウイルスによるヒトの致死率は、発症後は100%である。イヌへのワクチン接種により、1957年以降、日本では根絶されて恐ろしさが忘れられている。しかし東南アジア、台湾、中国ではいまだにウイルスが見つかっており、全世界で年間数万人以上の死者が出ている。野生のキツネ、ネコ、アライグマ、スカンク、コウモリにも感染することがわかっており、ウイルスの撲滅は困難である。ヒトからヒトへの感染例はない。感染後、発症までの潜伏期間は、かまれた部位で異なるが通常1~2カ月である。発熱、頭痛、倦怠感などのかぜ様症状で始まり、咬傷部位の痛みと知覚の異常、やがて興奮、錯乱、幻覚が起きて攻撃性が高くなり、水を欲しがるのに、のどの筋肉が過剰に緊張して飲めない恐水症発作が起こる。海外で狂犬病が疑われるイヌ、ネコ、および野生動物にかまれた場合、まず傷口をせっけんと水でよく洗い流し、医療機関を受診する。ワクチンと抗血清の投与が有効である。