陽電子放射線断層撮影装置。最近最も注目されている最先端の検査装置の一つで、放射性同位元素(ラジオアイソトープ)をブドウ糖と結合させたFDGという薬剤を体内に注入し、高精度のシンチカメラで集積を撮影する装置。ミリ単位のがん腫瘍やリンパ節に転移した微小ながんを画像化し、発見することができる。腫瘍細胞は健常組織に比べて3~8倍も糖代謝が活発であるためFDGが集積しやすく、腫瘍のおおまかな位置や悪性度の判定が可能になる。1回にかかる検査時間は1~2時間で、脳や膀胱など生理的にブドウ糖の集積が見られる臓器を除く全身のがん検査が可能。がんの再発・転移の有無だけでなく、抗がん剤や放射線治療の効果の判定に有用である。CTやMRI以上に数ミリ程度の大きさの腫瘍に対して良性か悪性かの判断や、リンパ節転移の有無の検索に優れるため、手術の是非を事前に判断できる利点もある。また、PETでブドウ糖や酸素の代謝を見ることで脳の局所機能から老年期認知症の診断、心臓の筋肉の血流を見ることで虚血性心疾患などの診断にも使われている。2002年4月より日本でも、てんかん、虚血性心疾患(→「狭心症」)、悪性腫瘍(肺がん、乳がん、大腸がん、頭頸部がん、脳腫瘍、膵がん、悪性リンパ腫、転移性肝がん、原発不明がんおよび悪性黒色腫)においてある一定の要件を満たす症例であれば、健康保険の適用として認められた。PETは機能的代謝情報(血流・代謝など臓器の働きを測定)を得るのに優れるが空間分解能が悪いため、形態学的画像診断法であるCTとの同時検査により画像を重ね合わせることで、より正確な診断や治療計画が可能になるものと期待されている。最近では1台でPETとCTの撮像ができるハイブリッド型装置(PET-CT)が開発され注目を浴びている。