心臓を養う冠動脈の狭窄(きょうさく)や閉塞などにより、心臓への血液の供給が需要を下回るために胸痛を発症する心臓病を総称して虚血性心疾患と呼び、そのうち代表的な疾患が狭心症と心筋梗塞である。狭心症には労作性と攣縮(れんしゅく)性狭心症がある。労作性狭心症は運動時に胸痛が発生し、主に動脈硬化による冠動脈の器質的狭窄が原因となる。治療には内科的薬物療法、経皮経管冠動脈形成術、冠動脈バイパス移植術が用いられる。冠攣縮性狭心症は安静時に胸痛が発生し、冠動脈の痙攣、冠攣縮による機能的狭窄が原因となる。治療は内科的薬物療法でコントロールされる。予防や再発防止には、動脈硬化の危険因子の除去が有効である。危険因子として加齢、男性、脂質異常症(高脂血症)、高血圧症、糖尿病、肥満、喫煙、ストレス、運動不足などがあるが、特に高脂血症コントロールの有効性は、欧米の大規模臨床試験の成績から立証済みである。