脳室という髄液で満たされた脳の中の空洞において、髄液が何らかの原因でうっ滞することで脳室が拡大することを、水頭症という。このうち髄液圧が正常で、明らかに原因不明のものを特発性正常圧水頭症と呼ぶ。多くは60歳以上の高齢者に発症し、歩行障害(歩幅が狭く、すり足、不安定)、認知障害、尿失禁などの症状を引き起こす。余分な髄液を体の別の部分(腹腔や右心房)に逃がす髄液シャント術を行うことで、症状の改善が認められることから、「治療可能な認知症」として重要である。一部の統計では、国内に30万人以上いる可能性があるとされており、人口の高齢化を迎えた日本では、社会的にも注目すべき疾患概念である。まずはこの病気を疑って、診察を受けることが重要である。