脳脊髄液が何らかの原因で漏れ出ることで、脳の位置が変わり、起立した際に脳の血管や神経が引きつれて起こる疾患。脳脊髄液の減少によって髄液圧が低下することが多いため、低髄液圧症候群とも呼ばれるが、髄液圧が正常範囲のこともある。症状は、立位によって悪化する頭痛が特徴だが、ほかにも頸部痛、めまい、耳鳴り、倦怠感(けんたいかん)、光過敏など多彩である。原因としては、髄液検査や脊髄麻酔時に行う腰椎せん刺が知られているが、脊椎・脊髄外傷後にみられるものや、明らかな要因がわからない特発性と呼ばれるものもある。近年、いわゆるむち打ち症を含む外傷性頸部症候群との関連が、研究者の間で関心を集めている。治療は、数週間の安静臥床と、十分な水分摂取が基本だが、症状が改善しない場合は薬物療法や、硬膜外腔に自分の血液を注入して髄液漏れを止めるブラッドパッチ療法(EBP)を施行することもある。本症に対しては長らく論争がなされていたが、厳密な診断基準のもとで治療を試みる、という条件付きで存在が認められつつある。