アミロイドβたんぱくが蓄積した老人斑や、タウたんぱくが蓄積した神経原線維変化が大脳皮質に多発することを特徴とする認知症。近年は壮年期までに発症するものを若年性アルツハイマー病と呼んでいる。実際には脳の病理所見から診断されることはなく、MRIやSPECT検査、脳脊髄液検査なども参考に、以下のような特徴的な症状から3期に分けて診断される。(第1期)約束を忘れる、同じ話を繰り返すなどの物忘れが見られる。人格は保たれ、ニコニコとしてつじつまを合わせる。(第2期)記憶障害が進み、慣れた道に迷い自宅に戻れなくなる。さらに、日常動作ができなくなる、人格の単純化、徘徊などの異常行動も見られるようになる。(第3期)運動障害が加わり、無言、無動、無欲となり、寝たきり状態になる。アルツハイマー病では神経の情報伝達を担うアセチルコリン量が減少するのが特徴である。1999年から治療薬として臨床使用されている塩酸ドネペジルは、アセチルコリンを分解する酵素の働きを妨げることで、脳内のアセチルコリンの濃度を高めて病状の進行を遅らせる。アルツハイマー病以外にも認知症をきたす疾患は多数あり、特に治癒可能な疾患(甲状腺機能低下症、梅毒、膠原病、硬膜下血腫ほか)による認知症を見逃してはならない。