患者の骨髄を抗がん剤や全身放射線照射で破壊後、ドナー(提供者)の骨髄から造血幹細胞を含んだ骨髄液を採取し、レシピエント(患者)の静脈に輸注することにより、造血幹細胞(hematopoietic stem cell ; HSC)を移植すること。対象は白血病をはじめとする造血器腫瘍のほか、重症再生不良性貧血、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、先天性免疫不全症、乳がんなどがある。最近では、末梢血中を流れる少量の造血幹細胞を移植ソースとする末梢血幹細胞移植(PBSCT)や臍帯(さいたい)血中の造血幹細胞を用いる臍帯血幹細胞移植(CBSCT)も行われており、「造血幹細胞移植」という概念としてとらえられている。現在、日本では、年間約2000例の造血幹細胞移植が行われている。自分自身の造血幹細胞を使う自家移植(自家造血幹細胞移植)と、他人から造血幹細胞を提供してもらって行う同種移植がある。同種移植の場合、ドナーと患者の血液型の一致は不要だが、白血球の型(白血球抗原、HLA)を一致させる必要がある。患者の骨髄全体を破壊せず、免疫抑制を中心とした軽度の前処置で免疫担当細胞だけを死滅させた後、造血幹細胞移植を行う「非骨髄破壊的前処置による同種移植(ミニ移植)」が疾患によって有効であることがわかり、高齢者にも移植の適応が広がってきている。