膵臓移植(膵移植)はインスリン分泌の廃絶した1型糖尿病の根治療法として開発された。膵移植は血管吻合を用いて膵臓そのものを移植する狭義の膵移植と膵内のインスリンを分泌する組織である膵島のみを分離し移植する膵島移植に分類される。膵移植は1966年に1例目が報告された。現在アメリカを中心に年間約1800例施行されている。移植手術自体にリスクがあること、インスリン治療という代替手段があることなどから膵臓単独移植は少なく、腎不全を伴う糖尿病患者に膵臓、腎臓をともに移植する多臓器移植に分類される膵腎同時移植が全体の約70%を占めている。腎臓移植(腎移植)を行った後、膵移植を施行する腎移植後膵移植施行例数が最近増加している。膵移植により膵臓が生着し機能を果たすと、血糖値が正常化してインスリン注射や透析治療が不要となり、生活の質(QOL)の向上や生命予後の改善が見込まれる。移植手技、免疫抑制剤、臓器保存方法、拒絶診断の改善により、膵移植成績は改善しており、膵腎同時移植の1年患者生存率は94%、1年インスリン離脱率が83%である。また、糖尿病合併症のうち腎臓障害、神経障害が改善するという証拠も集まりつつある。97年に臓器移植法が制定されたものの、脳死ドナー数が予想外に伸びないこと、また心停止ドナーからの膵移植の成績が比較的良好であったことから、2001年末より心停止ドナーからの膵移植が再開されている。最近では生体部分膵移植も行われている。