一刻を争う心肺蘇生患者などの救命率向上を図るためには、バイスタンダー(by-stander、救急現場に居合わせた人)による救急手当て、搬送時の救急救命処置、医療機関の専門的治療の各段階で最善の措置が施行され、さらに関係者相互の密接な連携の下に一刻も早く次段階への橋渡しを行っていくことが必要である。そのため病院に到着する以前での応急処置の必要性が叫ばれ、登場したのが救急救命士である。1991年より救急救命士の制度が実施され、医師の指示の下に搬送中に応急処置を行える資格制度が作られた。救急救命士は消防機関の救急隊員として救急業務に一定期間従事した後、救急救命士養成所で一定期間必要な知識技能を取得した者、あるいは救急救命士法で指定された大学(4年)・専門学校(2年以上)で必要な知識技能を取得した者で国家試験合格者のみに資格が与えられる。救急救命士には点滴に必要な静脈確保、気道確保のためのラリンジアルマスク(喉頭をふさぐ形で気道を確保するマスク)など特定の医療行為が認められている。救急救命士の特定行為の実施状況をみると年々拡大しており、この制度で救われる命が増えている。2004年7月より救急救命士による気管内挿管が認められるようになり、また06年からはエピネフリン投与も可能となっている。