脂肪肝とは、肝細胞に脂肪(主に中性脂肪)が過剰に蓄積した状態を指し、病理学的にはすべての肝小葉の3分の1以上の領域にわたって肝細胞に脂肪化を認める状態をいう。現在、わが国には臨床的に脂肪肝と診断される人が約1500万人もいるといわれている。一部を除き、線維増生、壊死、炎症は伴わず、原因が除去されれば改善する可逆的なものが多い。進行すると、肝硬変になる。脂肪肝の原因としては、糖分や脂肪分の過剰摂取による肥満、アルコール過飲、糖尿病等の過栄養状態によるものが多いが、薬剤性(副腎皮質ステロイド、テトラサイクリンなど)、中毒性(四塩化炭素、黄リンなど)、栄養障害(吸収不良症候群、クワシオルコルなど)、急性妊娠性脂肪肝などの特殊な病態によるものも含まれる。脂肪肝は無症状のことが多いが、時に食欲不振、易疲労感、上腹部重圧感を伴う。脂肪肝の診断は画像診断が主で、第一選択となる超音波検査の他、CTやMRIも用いられる。通常の脂肪化が肝全域に及ぶびまん性脂肪肝では、超音波検査において肝実質のエコー輝度の上昇、肝深部のエコーの減衰、肝内脈管構造の不明瞭化、肝腎コントラストの上昇などの特徴を示す。一方、非びまん性限局性脂肪肝(まだら脂肪肝)では肝腫瘍との鑑別が必要となる場合もある。治療は肥満に伴う脂肪肝では、中性脂肪130ミリグラム/dl以下を目標に食事と運動療法を行い、毎月1~2キロの減量を目指す。また糖尿病などに合併する二次性脂肪肝の場合は原疾患の治療を十分に行う。近年、脂肪肝を準備状態とする「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」と呼ばれる疾患概念が注目されている。これは、脂肪肝を基本病変とし、飲酒度が乏しいにもかかわらずアルコール性肝障害に類似する肝線維化を伴い、肝硬変へ進展する疾患である。