人間以外の動物細胞で作った人工臓器やブタなどの動物の臓器を、人間の病気の治療に利用する移植方法。1997年の臓器移植法施行以来、国内でも脳死からの臓器移植が始まった(→「脳死臓器移植」)が、依然として臓器提供を受けられずに死亡の転帰をとる患者も多く、臓器不足が深刻な問題となっている。この問題の解決方法の一つとして異種移植が期待されており、欧米を中心に研究が進んでいる。異種移植のドナー候補として最も可能性が高いのはブタであり、臓器の大きさや生理学的特性、特に血清成分が人間と近く、飼育しやすい、また家畜としての歴史が長いため病原体の研究が進んでいることが理由である。サルは動物学的には人間と近いが、出血熱等の共通感染症の問題から不適とされている。イギリスやアメリカでは臓器移植用に、遺伝子組み換えにより超急性拒絶反応を回避した「トランスジェニック・ブタ」が開発され、その心臓を重症の心臓病患者に移植する研究が行われており、品質が安定した移植用ブタ臓器の量産体制も整い始めている。