輸血を含む同種移植時の重篤な合併症の一つであり、供給者(ドナー)のリンパ球が宿主(レシピエント)の組織を攻撃することによって生じる。組織適合性が一致しないドナーから小腸、骨髄、血液などのリンパ球を多く含む臓器の移植を受けた時、ドナーのリンパ球が移植臓器とともにレシピエントに移入する。レシピエントが免疫不全状態にあると、ドナーのリンパ球を拒絶できないためにそのリンパ球(特にT細胞)がレシピエントの体内に生着、増殖し、レシピエントの組織を非自己とみなして攻撃し、障害を起こす。GVHDには移植後2~4週間で主に皮膚、肝、消化管障害をきたす急性型と、移植後100日前後に強皮症様の皮膚病変をはじめとする自己免疫疾患様の多彩な全身性の障害をきたす慢性型とがある。同種骨髄移植(BMT、→「骨髄移植」)時の発症頻度は5~45%とされる。予防法はHLA(組織適合性抗原)の一致したドナーの選択が第一であり、並行して各種免疫抑制剤の投与が行われる。BMT後のGVHDにはドナーのリンパ球がレシピエントの白血病細胞を殺す抗腫瘍効果としての側面もあり、GVHDを経験すると移植後の生存率が高いことが知られている。これをgraft-versus-leukemia(GVL)effectという。輸血後の重篤な合併症としての輸血後GVHDは、輸血後1~2週間で発熱、紅斑、肝障害、下痢、下血などで発症し、骨髄無形性による汎血球減少をきたし、重篤な感染症などにより致死的な経過をたどる。免疫不全状態でなくとも発症し、かつ血縁者間輸血で発症頻度が高い。親子間の輸血では、約50分の1の発症頻度とされる。現在は、ほとんどの症例で輸血血液への放射線照射が行われており、輸血後GVHDの発症はきわめてまれであるが、予定手術の場合には自己血輸血が望ましい。