心臓の表面には、心臓に酸素や栄養を送る血管(冠動脈)があり、この冠動脈が動脈硬化などで狭窄し、血液の流れが悪くなると狭心症が発症してくる。この狭窄した冠動脈に対して、カテーテルを用いた装置によって病変組織を切除して狭窄を解除しようとする方法が方向性冠動脈粥腫切除術(DCA)である。1985年、シンプソンらによって開発された治療法で、従来のバルーンによる狭窄病変の拡張治療と比較して、新しい装置(new device)の一つとされる。方法は、大腿動脈より経皮的にカテーテルを動脈内に挿入し、その中を通して装置を冠動脈の病変部まで進める。装置の先端付近にはステンレスの筒があり、この一側に小さな細長い窓が開いており、その窓を病変粥腫に当てた後、高速回転(毎秒約2000回転)するカッターで病変を切除する。切除された粥腫の断片は最先端部分にある円錐型のコーンの中に回収される。従来のバルーンによる治療法と比較して、窓の向きを変えることにより偏心性に存在する粥腫に対して効率よく選択的に治療が行えること、バルーンでは十分な拡張が困難な入口部病変や分岐部病変に対して効果的な血行再建を行えることが利点である。一方、使用するカテーテルがバルーンによる治療時よりも若干太くて固いものであること、高度の石灰化病変および屈曲の強い病変には装置自体が適さないことにより、適応病変を限定して施行されている。