MIDCABの定義は、(1)体外循環を用いない、(2)胸骨正中切開を施行しない、(3)上行大動脈を触らない、の3点である。その利点は、(1)補体の活性化がない、肺・肝・腎等の臓器障害がない、溶血がない、等であり、他にも(2)出血の減少、感染の減少、創治癒の時間短縮、縦隔の癒着がない、(3)全身性の小塞栓がない、大動脈解離がない、(4)手術創(皮膚切開)が小さい、(5)手術時間が短く、入院期間も短い、(6)低コストで施行できる、などの点があげられる。一般的には、左第4肋間または肋骨床で開胸し、左内胸動脈を直視下もしくは胸腔鏡下に剥離し、左前下行枝に拍動下で吻合するものである。ほかには、胸骨剣状突起下上腹部を正中切開し、右胃大網動脈を右冠動脈系に拍動下に吻合すること、および左側方切開により左回旋枝の枝に大伏在静脈グラフトや橈骨動脈グラフトを拍動下に吻合する(この場合は、中枢側吻合は下行大動脈である)こともMIDCABとよばれている。技術的には拍動下の吻合で難易度が高くなり、左内胸動脈と左前下行枝の吻合における開存率は、現在のところ通常よりやや低く93~98%である。その適応は、体外循環や大動脈遮断が困難な症例および経皮経管冠動脈形成術(PTCA;percutaneous transluminal coronary angioplasty)で何度も再狭窄を繰り返す症例が良い適応だと考えられる。また循環器内科医と心臓外科医の協力で、MIDCAB+PTCAもしくはPTCA+MIDCABなどのハイブリッドセラピーが行われている。