心臓に酸素や栄養を送る冠動脈が動脈硬化などで狭窄(きょうさく)または閉塞すると、狭心症や心筋梗塞を発症する。そこで開胸することなく股動脈や上腕動脈、橈骨(とうこつ)動脈から経皮的にカテーテルを動脈内に挿入し、その中を通してバルーン(風船)カテーテルを冠動脈狭窄ないし閉塞部位まで進め、バルーンを広げて病変部位を拡張させるものである。現在PTCAは冠動脈バイパス移植術(CABG)とともに虚血性心疾患(→「狭心症」)の重要な治療法となっている。PTCAはCABGに比して侵襲が小さい点に長所があるが、一時的にせよ冠動脈閉塞によって心筋虚血が引き起こされることなど、その適応には限界がある。さらに、PTCA後、冠動脈解離や血栓形成などによって数%の症例に急性・亜急性冠閉塞を認めることがあり、約6カ月後までには30~40%の症例で再狭窄が生じる。これらの限界を克服するため、冠血流を保ったまま拡張できるパーフュージョン・バルーン、高速で回転するカッターにより病変を削り取るアテレクトミー、完全閉塞病変に対し、レーザーをガイドワイヤ先端から照射し、再開通させるレーザーワイヤ、PTCA後に病変部に薬剤を特殊な仕掛けで注入するローカルドラッグデリバリー、金属製コイルや円筒を血管内腔に留置してその開存を確保するステント、再狭窄の原因となる細胞の増殖を抑制すべく、ステントに薬剤を塗布した薬剤溶出ステントなどが開発され、再狭窄を低減することが期待されている。