患者の細胞を特殊な器材で培養し、シート状にしたもの。患部に移植することで病態改善が期待でき、患者自身の細胞を使用するため移植時の拒絶反応がない、などの利点を併せ持つ。日本では産官学連携プロジェクトで開発、実用化が進められており、再生医療の一分野として注目されている。従来の方法では培養増殖させた細胞を器材からはがして回収する際、たんぱく質分解酵素を用いたため、細胞が個々に分かれてしまっていた。そこで温度応答性の特殊な高分子構造を持つ培養器を用い、温度の変化によって細胞を器材表面からはがす方法で、きれいなシート状のまま回収できるようにした。このシートは細胞本来の機能を保持し、そのまま患部に貼るように移植できるほか、何枚も重ね合わせて立体構造を作ることも可能である。2015年9月、医療機器メーカーのテルモ(本社・東京都渋谷区)が開発した「ハートシート」が、虚血性心疾患による重症心不全の治療用として、厚生労働省から条件・期限付きで承認された。ほかにも角膜、食道、歯周、肺の疾患における治療について臨床研究中である。