出生前の胎児や胎芽などの病気(染色体異常、遺伝病、形態異常など)の有無や程度、性別などを診断すること。ほとんど副作用がない一般的な超音波検査のほか、羊水穿刺などは、必要な時に妊婦(高年妊婦の染色体検査など)の希望により行われる。より専門的である、妊娠8~11週に検査可能な絨毛診断(絨毛採取 ; chorionic villus sampling、主として遺伝病の遺伝子解析)、確定的な診断情報を提供する胎児血採取、胎児皮膚生検などは、高度な技術が必要なため、大学病院など一部の病院で実施される。さらに近年の診断技術の進歩により、血液検査だけで胎児の異常の確率がわかる母体血清マーカー検査が行われる場合がある。近年の晩婚化に伴う高齢出産では、ダウン症候群(精神遅滞を伴う染色体異常)児などの障害児を妊娠する可能性がやや高くなるため、これらの検査を受ける妊婦が増えている。しかし、出生後の診断は、治療や療育を行うために実施されるのに対し、出生前診断は、人工妊娠中絶に結びつく危険性がある。これは障害児が生まれる権利を奪うことにつながりかねず、ことに安易に行われて確率のみわかる妊婦の母体血清マーカー検査は、妊婦に不必要な不安のみを与えかねない。ダウン症候群児のいる家族は、障害そのものはそれほど負担に感じないことは多いものの、周囲からの各種の偏見や差別に悩んでいる。これらを周囲から除去し、障害児の家族を十分に支える社会体制づくりが望まれる。