避妊のために使われる、経口避妊薬。低用量ピルともいう。卵巣から分泌される女性ホルモンを配合し、卵巣本来の働きを抑え、排卵をなくす作用がある。病気のため母体保護が必要な場合などに、確実な避妊ができる。服用をやめれば、再び排卵が起こり、妊娠できる。日本における人工妊娠中絶件数は、2007年に26万件まで減少したものの、20歳未満の女性の中絶件数は、1960~70年代に比べてまだ多い。日本で用いられている避妊法として、最も多いのはコンドーム、次いで膣外射精、基礎体温法などで、近代的な避妊法であるピルや子宮内避妊器具(IUD)は低率である。ピルが日本で認可されて2009年で10年を迎え、使用者は約66万人に達したが、16~49歳の女性人口の3%程度であり、避妊目的はその約3割に過ぎなかった。月経痛や子宮内膜症の治療薬として、避妊以外の効用も大きい。副作用には、頻度こそ少ないものの、血栓症、心臓と脳の血管障害など重篤なものもある。また、エイズウイルス(HIV)の感染は防げない。ただし利点の方が副作用などの懸念より大きく、コンドームよりも確実な避妊法として、欧米では主として用いられている。普及に向けて、正しい情報提供や教育の充実が望まれる。