病気や早産などで母乳が出ない母親のため、別の女性の母乳を提供する仕組みである。海外では広く普及している。世界保健機関(WHO)および国際連合児童基金(UNICEF)は、乳児にとって理想的な栄養は母親や乳母からの母乳または搾乳のみと提唱している。特に母乳には、低出生体重児の慢性肺疾患や未熟児網膜症、壊死(えし)性腸炎の発症リスクを下げる効果がある。提供者はHIV(ヒト免疫不全ウイルス)、B型およびC型肝炎、梅毒の感染者でないこと、たばこや薬品などの常用者でないことが条件とされる。順調に成育している6カ月以下の乳児の母親に限る、とする国もある。収集された母乳は、細菌検査や消毒を行ったのち、提供対象児に届けられる。提供対象の多くは未熟児であるが、健康上の理由で医師から母乳を処方されるケースもある。日本では2013年、昭和大学病院が初めて導入した。提供対象は同大学の付属病院で生まれた極低出生体重児に限り、提供者も同病院で出産し、子どもがまだ新生児集中治療室に入院している母親に限っている。これは母乳の成分が出産後の週数で変わるため、授乳する乳児と提供する母親、双方のメリットを優先したものである。