花粉症は、大気中に飛散した花粉をアレルゲン(原因物質)として、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、のどの違和感、せき、目や皮膚のかゆみ、腫れや充血、頭重(ずじゅう)、倦怠感(けんたいかん)などの全身症状を引き起こすアレルギー疾患である。漢方治療では、症状に対処する標治(ひょうち)治療と、花粉に対してアレルギー反応を起こす体質自体の改善を目的とした根治(こんち)治療とがある。標治治療では、出現している症状のほか、胃腸の様子や体の冷えなど、患者の体質も勘案して漢方薬を処方する。たとえば、胃腸が弱くない人の鼻水や目のかゆみには、小青竜湯(しょうせいりゅうとう)が頻用される。鼻づまりが強い場合には、葛根湯加川キュウ辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)などが用いられ、冷えが強ければ、麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)などが使用される。胃腸が弱い人の鼻炎症状には、苓甘姜味辛夏仁湯(りょうかんきょうみしんげにんとう)などが処方される。西洋薬の抗アレルギー薬には眠気を催すものがあるが、漢方薬にはそのような副作用はない。一方、アレルゲンに敏感に反応しないように体質を改善するためには、各自の体のバランスの調整が大切になる。ただし、体質改善にはある程度の期間が必要で、仮に花粉症に10年間悩んでいる人であれば、その半分の5年を要する、ともいわれている。