冬に流行するインフルエンザは、高熱や筋肉痛などの症状が出て、脳症を起こしやすく、2次感染により死亡することもある感染症。2009年には新型インフルエンザA-H1N1が猛威をふるった。漢方医学では、インフルエンザなどの発熱性疾患は、かかり始めの時期、少し遷延した時期、重症化した時期、というように6つの病期に分けて治療する。その場合、発汗や関節痛はあるか、食欲はあるか、寒気や熱感があるか、といった所見が大切である。実際の診療では、例えば、咽頭痛、発熱、関節痛などが見られる初期段階では、麻黄湯(まおうとう)、大青竜湯(だいせいりゅうとう)、桂麻各半湯(けいまかくはんとう)などを症状や体質に合わせて処方する。麻黄湯は、タミフルなどの抗インフルエンザ薬と比較して、解熱までの時間に有意差がないという研究結果が報告され、とくに副作用が心配な小児の治療で、新たな選択肢として注目されている。日本感染症学会が09年9月に発表した「新型インフルエンザ診療ガイドライン」には、「習熟した医師のもとで」という条件付きで、漢方薬の投与が記載された。