何らかの異常で頭毛などが欠如、脱落する病態。一般に頻度が高いのは円形脱毛症で、頭部に円形の脱毛が、限局性または広範囲に生じる疾患である。原因には遺伝、自己免疫異常などが考えられているが、詳細はわかっていない。体の免疫系、内分泌系、自律神経系の働きに影響を与える、精神的ストレスの関与も考慮する必要がある。漢方では、竜骨(りゅうこつ ; 古代哺乳動物の化石)や牡蛎(ぼれい ; カキの貝殻)に精神安定作用があるため、ストレス関与の円形脱毛症に対しては、これらの生薬を含む処方が頻用される。たとえば、体力が充実した人で、脱毛のほか、イライラや不眠などもみられる時には柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)など、比較的体力が低下した人で、神経が過敏で、眠りが浅く、夢を見やすい人には桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)などを用いる。また、加齢にともなう脱毛については、先天の気(き ; 生命活動を営むエネルギー)を蓄えている腎(じん)の衰えが関与していることが多く、この場合は腎の働きを補う八味地黄丸(はちみじおうがん)、牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)などが使用される。