多汗症は、本来の体温調節の目的を外れて、発汗異常を起こす病気。甲状腺機能亢進症などの内分泌代謝異常、感染症などが原因の場合は、原疾患の治療を優先する。一方、手足に見られる多汗症の多くは原因不明で、小児から思春期に発症が多く、成長とともに軽快すると考えられている。局所的に過剰な発汗が、手足、ワキ、頭、顔面に左右対称に認められるが、睡眠中は発汗がない場合に疑われる。漢方的治療では、黄耆(おうぎ)など発汗を調整する効果がある生薬を含んだ処方を用いる。精神的な緊張でも悪化する傾向にあるため、自律神経の働きを整える処方を併用することも多い。とくに自律神経の一つである交感神経が亢進すると、血圧上昇や動悸(どうき)に続いて脇や手足などに発汗が現れるため、神経を鎮める効果がある抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)や桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)などを用いる。