K.ゲーデル(1906~78)が証明した形式論理体系の不完全さを示す数学の定理。直観的にいえば、「世の中には正しいとも正しくないとも判定できないことがいくらでも存在する。そして自分自身の論理の中だけでは自分自身の正しさを証明することもできない」という内容である。この定理が人工知能の限界(すなわちコンピューターには人間のような知能はもてないこと)を証明しているとする主張が、人工知能に否定的な研究者からなされることがある。「人間にはできてコンピューターにはできないことが存在する」とこの定理は証明しているという主張であるが、実はこの定理は人間とコンピューターの原理的な差異にはまったく言及していない。したがって、この定理で人工知能に限界があることの理由とするのは誤りである。