福島第一原子力発電所の敷地は、もともとは海抜30m程度の高台であった。しかし、海水を冷却水として引くために高台を削って海抜数mの高さの場所に、原子炉建屋、タービン建屋を建設し、海水くみ上げポンプも設置した。掘り下げた建屋周辺には地下水が流入してくるため、原子炉建屋、タービン建屋の周辺にはサブドレンと呼ばれる井戸を掘り、通常運転時にも地下水をくみ上げて海に流していた。2011年3月11日の事故後も、地下水は原子炉建屋、タービン建屋に向かって流れてきたし、一方、地震で破壊された原子炉建屋、タービン建屋、トレンチ、ピットなどと呼ばれる地下トンネルから放射能汚染水が環境に流れ出てきた。現在では、溶け落ちた炉心を冷却するために意図的に注入し続けている水と地下水が混然一体となって、毎日400tの放射能汚染水が増加してきている。その量を何とか少しでも減らそうとサブドレンの水、あるいは上流で地下水をくみ上げ、海に流すようになってきた。中でも、山側から海側へ流れてくる地下水をくみ上げて別の流路へとバイパスし、原子炉建屋への地下水の流入量を減らそうとすることを地下水バイパスと呼んでいる。しかし、そうしたところで、減らせるのはせいぜい毎日100t程度でしかなく、放射能汚染水は容赦なく今後もたまってくる。