高度600キロぐらいまでは希薄ながら大気が存在し、それ以下の高度を周回する衛星は空気抵抗のために徐々に高度を下げ、最終的には大気圏に再突入する。ほとんどは再突入時の空力加熱で燃え尽きるが、落下する衛星が大型になると、高密度の材質でできた一部の部品は燃え残り、地表まで落下することがある。軌道高度が高くなるほど、大気は希薄になり落下に要する期間は長くなる。高度600キロ以下では、軌道制御をしなければ数年以内に衛星は再突入するが、800キロになると帰還は数十年に延び、1000キロでは数百年を要することになる。現在、国際的に低い軌道の衛星は、運用終了後25年以内に衛星が地表に落下するように運用することが求められている。
2011年は、9月24日に太平洋に落下したアメリカの大気観測衛星UARS(1991年打ち上げ、6トン)や、ドイツのX線観測衛星ROSAT(90年打ち上げ、2.4トン)など、大型衛星の落下が相次いだ。特にROSATは、X線ミラーが燃え残り1.6トンもの残骸が地表に到達すると予想されたが、10月23日にベンガル湾上空で大気圏に突入し、残骸は無人の海上に落下した。衛星と同じ軌道に投入されるロケットの最終段は、逆噴射を使って計画的に落下させるという運用が一般化しつつある。JAXA(宇宙航空研究開発機構)も国際宇宙ステーション向け無人輸送船「こうのとり(HTV)」の打ち上げでは、使い終えた第2段を南太平洋に計画的に落下させている。