MOSFET(MOSトランジスタ)特性の限界が議論される中で、ゲート直下の電流が流れる部分であるチャネルに新材料を導入することにより、キャリアの移動度を通常使用されているシリコンよりも飛躍的に大きくする技術が検討されている。
(1)Si/Ge(シリコン・ゲルマニウム):シリコンとゲルマニウムは周期律表でも同じ族に属しているのでどんな割合でも完全に固溶するが、原子半径が違うため大きな応力が生じ、この応力によってキャリア移動度を大きくする技術で既に実用化されている。しかしその効果はたかだか数十%である。さらに高性能化するためにGeだけでチャネルを構成する技術も研究されている。
(2)3-5族化合物半導体:ガリウムヒ素のような化合物半導体は一般にシリコンよりも数倍から数十倍移動度が大きいため、これをチャネル材料に用いる研究がされているが、製造工程で高温にした時にシリコンとの化合を防止することが課題である。
(3)ナノチューブ:カーボンナノチューブは電流密度やキャリア移動度がシリコンよりも数十倍と格段に大きい。しかし太さが数nmと細いため、回路設計上チャネルに何本も並べる必要があること、所定の場所に所定の本数配置する技術などが難しいとされている。
(4)グラフェン:グラファイトを1~数層形成したものをグラフェンとよび、キャリア移動度がナノチューブ並みに非常に大きいと考えられるため、2009年から急に注目され始めている。まだチャネル部分に選択的に形成する技術など基礎技術開発の段階だが、シリコン技術を飛躍的に高度化し、救世主となる可能性を秘めている。