光の代わりに超音波を使って物体のごく細かい構造や弾性的性質を観察、検査する装置。1972年にレーザー走査超音波顕微鏡(SLAM ; scanning laser acoustic microscope)が、続いて翌年に走査超音波顕微鏡(SAM ; scanning acoustic microscope)が発表された。SLAMは、試料全体を超音波により振動させ、試料内を透過した超音波の振幅を測定する。そして、レーザーを走査することにより試料内部の弾性的性質を観察するもので、超音波の振幅の変化を電気信号に変えてブラウン管上の画像として観察できる利点があり、固体物質の非破壊検査などにも応用されている。SAMでは音響レンズを用いて超音波ビームを試料の1点に収束させて、その反射波の強度を測定し、試料を機械的に走査することにより試料内部の性質を観察する。このSAMでは、実時間観察はむずかしいが、分解能の点でSLAMよりも優れている(1GHzで1μm〈マイクロメートル〉程度の分解能)。また、光学顕微鏡では物質の反射率や屈折率の差によってコントラストが得られるのに対し、このSAMでは、超音波の伝わり方によって物質の硬さ、弾性構造などの違いがわかる。このためSAMでは光学的にコントラストの得難い物質でも良好な結果が得られ、生体組織やICなどのマウントの接合状態の検査など、幅広い応用が検討されている。