ソリトンという言葉は、安定な粒子のようにふるまう孤立波という意味をもち、波長によってそれぞれの波の伝播速度が異なる(これを分散性という)水面の非線形波動を表すモデル方程式(Korteweg-de Vriesの方程式)から発見された。光ファイバーの中を光パルスが伝播する場合、非線形効果を考えなければ、ファイバーの分散性によるひずみでパルス幅が広がり、高速・長距離通信において大きな障害となるはずである。ところが、ファイバー中の光波の包絡線(たとえば、1定点からの垂直距離が一定な直線群の包絡線は円である)がファイバーの分散性とカー効果(電磁場で起こる偏光現象)が非線形性のバランスをとることによって、パルス状の孤立光波(光ソリトン)を作る可能性が示され、実験的にもレーザー光源と低損失光ファイバーの開発により光ソリトンの存在が確認された。現在では、ファイバー光増幅器の開発とソリトン通信に関する画期的な理論が展開され、長距離通信実験では、通信速度10Gbps(ギガビット/秒)、通信距離1万1000kmという数値を示しており、両方とも従来の光通信方式の記録を更新している。