フランスの物理学者S.カルノー(1753~1823)によって提唱された熱力学の理想サイクルで、作動物質が断熱圧縮、等温膨張(温度はT1で一定)、断熱膨張、等温圧縮(温度T2で一定)により成り立つ可逆サイクルである。カルノーサイクルの熱効率は(T1-T2)/T1で表され、T1K、T2Kとなる高低両熱源の間で熱エネルギーを他の種類のエネルギーに変換するどのようなサイクルもカルノー効率を上回ることはできない。日本の電力供給の約9割を占める火力発電と原子力発電は蒸気タービンを用いた発電であるが、その熱サイクルはランキンサイクル(rankine cycle)と呼ばれ、ポンプによる加圧(断熱的)、ボイラー(あるいは原子炉)内における加熱、蒸発と加熱蒸気、蒸気タービンによる膨張過程、凝縮器内の廃熱のサイクルで成り立っている。近年、普及が進んでいるガスタービンによる発電は、ブレイトンサイクル(Brayton cycle)と呼ばれ、断熱圧縮、等圧加熱、断熱膨張、等圧冷却により成り立っている。そのほか往復動熱機関の熱サイクルとしてオットーサイクル(Otto cycle)、ディーゼルサイクル(diesel cycle)、スターリングサイクル(Stirling cycle)などがある。