正常細胞ががん細胞(悪性腫瘍)になることが「がん化」で、がん化させる性質を発がん性という。がん化は、正常細胞の遺伝子(DNA)が2個から10個程度損傷することで発生する。これらの遺伝子の損傷は一度に誘発されるわけではなく、長い間に徐々に誘発されることもわかってきた。正常細胞からがん化に向かってだんだんと進むことから、「多段階発がん説」が提唱されている。
損傷する遺伝子は、細胞の増殖を促進する遺伝子が、必要ではないときにも促進状態が継続される場合(がん遺伝子の活性化)と、細胞増殖を抑制する遺伝子が作動しなくなる場合(がん抑制遺伝子の不活化)とがあることがわかってきた。損傷には、DNAの暗号に異常が生じる突然変異(mutation)と、暗号自体は変わらなくても使われ方が変わってしまうエピジェネティック変異(epigenetic mutation)とがあることも解明されてきた。
また、iPS細胞の作製には4個の遺伝子を細胞に導入する必要があることから、遺伝子を損傷する可能性があり、細胞のがん化につながる危険性が問題となっている。