遺伝子治療は、機能不全に陥った(異常な)遺伝子の代わりに正常な遺伝子を細胞に導入することで機能を修復して、病気を治療する技術である。広義には、病気の原因となる遺伝子の働きを抑える方法など遺伝子操作に関わる治療も含まれる。根本治療と期待されているが、治療用のベクター(遺伝子を細胞内へ送るための運び屋)に改善の余地があり、成功例も少ないことから、これまでは発展途上の医療技術と考えられていた。2017年には白血病治療に遺伝子操作細胞のCAR-Tと、希少な目の遺伝性疾患に対するSpark Therapeutics社による遺伝子治療薬の「ラクスターナ(Luxturna)」が、相次いでアメリカ食品医薬品局(FDA)に承認された。このラクスターナは、正常なRPE65遺伝子を網膜細胞に導入、付加して治療するが、ベクターに安全なAAV(アデノ随伴ウイルス)を使用する技術改良をしている。しかし、両目で約9600万円という高額な治療費が課題となっている。