人の健康リスクを平均余命の短縮によって評価すること。たとえば10万分の1の発がんリスクは、発症して余命が約11年縮むとすれば、約1時間の損失余命に相当する。人の死に貴賎がないとすれば、これにより多種多様な健康リスクを統一的に比較できる。さらに、非致死的な障害を考慮するため、入院中などの余命1日を0.8日などと割り引いて評価することを生活の質(Quality of life=QOL)と呼びこれを考慮した損失余命をQALY(Quality-Adjusted Life Year)と呼ぶ。ただし、生活の質はあくまで本人が評価すべきものであり、他人が評価すべきものではないとされるため、健康リスクの指標に用いることには批判もある。損失余命とそのリスクを削減するのに要する費用の比を採れば、1年寿命を延ばすための費用を評価できる。
生態リスクでも、その生物種または個体群が絶滅するまでの平均待ち時間Tにより、絶滅リスクを評価し、その短縮または逆数(1年あたりの絶滅リスク)の増加(ΔT-1)により生物多様性への影響を評価する試みがある。しかし、各生物種の「価値」は人命と異なり、多様と考えられる。そのため、近縁種との分岐が生じた進化年代を考慮した各種の「系統学的価値」とΔT-1の積により、期待生物多様性損失(Expected loss of biodiversity)を評価することが試みられている。