ケイ酸塩を主成分とする繊維状の鉱物で、クリソタイルやクロシドライト、アモサイトなどの種類がある。耐熱性、耐摩耗性に優れているため、ボイラーや暖房パイプの被覆、自動車のブレーキ、建築の断熱材などに広く使用された。しかし、吸い込むと15~40年という長い潜伏期間をおいて、肺がんや中皮腫(がんの一種)の原因になるとされる。1972年に世界保健機関(WHO)と国際がん研究機関によりアスベストは発がん物質に指定された。日本でも89年の大気汚染防止法改正により特定粉じんに指定され、使用制限や使用禁止の措置がとられた。92年発効の「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約(バーゼル条約)」では有害廃棄物に指定され、越境移動が禁止された。また、国際労働機関(ILO)は86年6月に「石綿の使用における安全に関する条約(石綿条約)」を採択し、職業上の石綿曝露による健康被害の防止と抑制などを求めた(89年6月発効。日本は2005年8月批准)。日本では05年にアスベストを使用した資材を製造していたニチアスやクボタで製造に携わった社員とその家族、さらに工場周辺の住民も健康被害を受けていることが報道され、注目された。これを受けて06年2月に「石綿による健康被害の救済に関する法律」が成立し、被害者救済制度が整備された。13年11月末日の認定療養者は5111人、施行前死亡者遺族3542人となっている(環境再生保全機構)。また、06年9月から代替品のない一部用途を除き0.1%を超えてアスベストを含有するすべての物の製造、輸入、使用が禁止された。12年3月には、例外的猶予措置も終了し、完全禁止となった。アスベストの大半は建材として使用されたことから、建物解体時の飛散防止や地震等災害時のがれき処理が課題となっており、アスベスト台帳の作製が進められている。