大気中に浮遊している大気汚染物質である浮遊粒子状物質の内でも、粒径の小さいもののこと。特に、粒径が2.5μm以下の粒子はPM2.5と呼ばれ、人の呼吸器系の奥まで入りやすく、また、粒子表面に有害な成分が存在していることから健康影響が大きいことが懸念されている。
WHOは2006年に環境目標値に関するガイドラインを設定した。環境省では健康影響との関係を解明することを目的に、1999年度より調査研究を継続してきたが、2008年4月に「微小粒子状物質健康影響評価検討会報告書」がとりまとめられた。結論として、呼吸器系・循環器系の死亡リスクの増加、症状・機能の変化及び入院・受診数の増加に関する疫学知見から、粒子状物質において、従前から認められている呼吸器系の健康影響が微小粒子状物質においてもみられ、また、新たに微小粒子状物質による循環器系や肺がんの健康影響がみられた、としている。また、日本と欧米の間における微小粒子状物質の循環器系疾患に対する影響の違いに関しては、生活習慣等の違いにかかわる疾患構造等の相違等が考えられることから、欧米における疫学研究の結果を直接使用するには留意が必要、としている。
さらに、大気中粒子状物質の曝露で観察される相対リスクは他の曝露要因と比較して必ずしも大きくはないものの、大気汚染による曝露は、人の嗜好や生活パターンによらずすべての者に及ぼしうるもので避けることが困難であるという特性を持つことから、公衆衛生の観点から微小粒子による健康影響を軽視することはできないと結論した。これを受け、環境基準として年平均値15μg/m3以下、かつ1日平均値35μg/m3以下が09年9月に告示された。