2011年3月11日の東日本大震災と津波による福島第一原子力発電所事故では、大気中に大量の放射性物質が放出された(→「放射能による大気汚染」)。放射性物質は大気中を移動する中で、重力や降雨により地上に降下し、地表に落下する。建物や道路に降下した部分の多くは降雨等により流され、最終的に河川に運ばれるが、土壌に落ちたものはゆっくりと土壌の下層に移動する。問題となるセシウム137などの放射性物質の大部分は、土壌粒子と結合するため下層への移行は遅く、地表数センチにとどまっているとされる。このため、土壌の汚染対策として表層の削り取りが有効である。文部科学省は、原発事故によるセシウム134と137、ヨウ素131、プルトニウム238と239+240、ストロンチウム89と90、およびテルル129m、銀110mの土壌濃度マップを公開した。
農地の放射能汚染は作物の汚染につながるので問題である。土壌から作物への移行は、移行係数(作物中の放射性物質の濃度を土壌中の放射性物質濃度で割った値)によって評価でき、例えば、セシウム137の米への移行係数は平均0.008(範囲:0.0001~0.61)である。政府は稲の作付け制限として1キログラムあたりの土壌中放射性セシウムを5000ベクレルとしたが(移行係数=0.1と想定)、結果的に500ベクレルを超える米が見つかっている。