リスクを限りなくゼロにすべきとする政策や考え方。死は確率事象であり、リスクがたとえ100万分の1と低い値であっても、死ぬ人にとってはすべてを失う。そして、生命は金に代えられないともされる。しかし、死亡リスクを下げるために、個人個人が選択してかける費用は測定できる。たとえば、より頑丈な自動車と軽自動車では、死亡事故率は前者が低いとしても、費用の面から後者を選ぶことがある。より危険な職種であっても、賃金が高いことから、そちらを選ぶ人もいる。福井県立大学岡敏弘教授によれば、生命に関するリスクの分析である確率的生命の価値(Value of Statistical Life)は、アメリカでは100万~1000万ドル、日本では約8億円との推定値が出されている。昨今は、サッカーの試合でも、点を取るために攻めることが失点するリスクを増すことにもなることから、解説者がリスク管理を口にすることがある。すなわち、一つのリスクを減らすと別のリスクが増えるというリスクトレードオフは、日常概念となりつつある。ゼロリスクではできない対処法を、リスクトレードオフならできるともいえる。