ナノサイズの粒子で、通常の大きな材料では現れないさまざまな現象が出てくる。量子サイズ効果によりゼロ次元状態が形成され、物質固有のエネルギー状態が変化する。直径2~10nm(ナノメートル nは10-9=10億分の1)の半導体微粒子では、微粒子の大きさに対応した異なる発色が実現し、ナノ領域の染色用色素として注目されている。結晶形状や粒径により紫外線や可視光領域での散乱特性も変化し、酸化亜鉛などのナノ粒子は、紫外線散乱剤として用いられている。さらに、ナノ粒子では表面の割合が大きくなり、一般に融点が下がるうえ、化学的な活性も増大する。サイズの小さい粒子が細胞内に取り込まれやすいことを利用する応用もある。例えば、磁性微粒子は外部から高周波磁場を加えることで局所的に加熱することが可能で、がん細胞にこの粒子を送り込めればがんの効果的な温熱治療が可能になる。一方で、ナノ粒子をうまく固定する手法も検討されており、たとえば、表面に微細な穴が多数あいている高分子などの穴に鈴のようにナノ粒子を入れることが試みられている。ナノ粒子の周りが空洞でその表面積が有効に生かせるため有害物質の処理などの機能が促進される。さらに、ナノ粒子が自由に飛び散ることを防ぐため、ナノ粒子の健康被害に対する心配を解決するのにも役立つ。