磁性ナノワイヤ中の磁気構造は、ナノワイヤに電流を流すことで動かすことができる。この性質をうまく使うと、ちょうど自動車レース場のレーストラックを車が走るように、ナノワイヤに沿って磁気構造が走るようになる。この磁気構造を情報の「ビット」として使い、トラック上のある場所に磁気構造を読み出したり書き込んだりする仕組みを作れば、新しいメモリーデバイスを作製することができる。最近、ns(ナノ秒 nは10-9=10億分の1)レベルの電流パルスにより、複数の磁壁(MDW ; magnetic domain wall 異なった磁化方向を持つ磁区の界面)が磁性ナノワイヤに沿って前後に高速で繰り返し移動することが実証され、その基本動作が確認された。現時点ではまだ研究段階であるが、低消費電力、高速、さらに可動部品を使わないため、高い安定性と信頼性をもった新たなメモリーデバイスとして機能することが期待されている。