磁気トンネル接合(MTJ)とは、二つの磁性体の層、すなわち磁性層(magnetic layer)の間に非常に薄い絶縁層を挟んだ構造で、スピントロニクスデバイスに用いる構造の一つである。電極の間に電圧をかけると、障壁を超えて電子が流れ込んでいくトンネル効果(tunnel effect )という現象があるが、二つの磁性層の磁化方向が平行ではない場合には、平行な場合に比べ、絶縁層を通したトンネル抵抗が大きくなる。このトンネル磁気抵抗効果(TMR効果 tunneling magnetoresistance effect)を利用して、メモリーデバイスを構成することができる。最近、磁性層や絶縁層の堆積技術の進歩、特に酸化マグネシウム絶縁層により、この特性が大幅に改善された。磁気トンネル接合は微細化も可能で、磁気ランダムアクセスメモリー(MRAM ; magnetic random access memory)に組み込むことによってその性能を向上させることから、次世代不揮発性記憶素子(non volatile memory device)の本命として、研究開発が盛んに行われている。磁性層に磁化方向を書き込む方法としては、ワード線(word line 配列されたメモリーを制御するための信号を担う配線)に電流を流し、その磁場で書き込む従来の方法に加えて、一定方向の電子スピンを有する電流を注入して、そのスピントルク(spin torque)を利用する方法も検討されている。