核スピントロニクスともいう。半導体材料やナノ材料は、当然、原子でできており、その多くは核スピンを有している。通常は、これらの核スピンと電子系の相互作用は弱く、核スピンの存在は無視されてきた。しかし、最近の研究で、特定の量子ホール効果状態において、電子スピンと核スピンの相互作用が強くなり、ナノ領域の核スピンを偏極したり、核スピン偏極度を抵抗測定で評価したりすることがGaAs(ガリウム-ヒ素)系の半導体で可能になった。この技術を用いると、これまで感度の関係から汎用的な核磁気共鳴(NMR)測定を行うことができなかった1層の量子井戸やナノ構造でNMR測定を行うことが可能になるため、通常の電気的・光学的測定では評価が難しかった物性が明らかになりつつある。核スピンを用いた量子ビットの実現に向けて、半導体ナノ構造中での核スピンのコヒーレント(coherent 波長や位相が同調すること)制御も実現された。まだ研究がスタートしたばかりであるが、固体中でスピンを制御するスピントロニクスに対応して、固体中で核スピンを制御する核スピンエレクトロニクスの発展が期待されている。