生体において、モーターさながらの機械的運動を行う複合体。分子モーター(molecular motor)などとも呼ばれる。アデノシン三リン酸(ATP)の加水分解によって得られたエネルギーをもとに、鞭毛(べんもう)を動かして移動するATPモーター(ATP motor)がよく知られている。水素イオンやナトリウムイオンの勾配(こうばい)を利用してモーターを回転させることにより鞭毛を動かし、水中移動を行うバクテリアも存在する。また、ATPを利用して二足歩行のように移動するものとして、アクチンとミオシンにより筋収縮の機構を担うミオシンモーター(myosin motor)、微小管に沿って移動するキネシンモーター(kinesin motor)やダイニンモーター(dynein motor)などのたんぱく質モーター(protein motor)も報告されている。これらのモーターの動作原理の解明とともに、ナノマシンの作製への応用も検討されている。