ダイヤモンドNV中心ともいう。ダイヤモンド中に形成される欠陥のひとつ。ダイヤモンドを構成する炭素(C)の空孔(炭素がダイヤモンドの配列から抜けた状態)と不純物である窒素が結合して欠陥を作る。この窒素-空孔複合体をNV(nitrogen vacancy)中心という。孤立した一つの欠陥の特性が光学的に高感度に測定できることが、この欠陥の最大の特徴である。NV中心における電子スピンや核スピンがそれぞれ量子ビットとして働くことが確認されたのみならず、それらの間の量子もつれ状態(entanglement state)も測定されている。NV中心を設計図通りにきちんと配列することは難しいが、室温で動作する量子ビットとして注目を集めており、量子暗号通信への応用も期待されている。ダイヤモンドはパワーデバイスへの応用も期待されている半導体で、同位体である13Cと12Cからなるダイヤモンド薄膜を交互に積層するだけで、ヘテロ構造(heterostructure)という異なる半導体の積層構造に匹敵する電子の閉じ込め効果が得られることも報告されている。